【弁護士解説】遺言で指定された相続人が死亡したら相続はどうなる?

「遺言書で指定された人が亡くなった」に関するお悩み

【お悩み①】
母が残した遺言書によれば、生前お世話になった第三者の方に遺贈する旨の遺言があります。でもその人は既に他界しています。この場合、遺言は無効でしょうか



【お悩み②】
父が残した遺言書によれば、
母に全財産を相続させると書かれているけど、母は父より先に亡くなっています。相続は、どうなる?



【お悩み③】
遺言で指定された相続人が亡くなった場合は、その方の相続人が相続することになるのでしょうか。



【お悩み④】
妻に財産を残したいけど、妻が亡くなった場合は、二人いる子供のうち長女に財産を残したいと考えています。どのような遺言書を残せばいいのでしょうか。
お悩みに関するざっくりした結論
- 【お悩み①」第三者に遺贈させる旨の遺言が残されていた場合、第三者が先に亡くなっていたとき相続はどうなるか。
-
原則として、「第三者に遺贈させる」旨の条項は無効となります。
- 「お悩み②」父が母に全財産を相続させる旨の遺言を残していた場合、母が先に亡くなっていたとき相続はどうなるのでしょうか。
-
原則として、「母(妻)に全財産を相続させる」条項は無効となります。
- 【お悩み③】遺言で指定された相続人が亡くなった場合は、その方の相続人が相続(代襲相続)することになるか?
-
原則として、当該条項は無効となり、代襲相続は発生しません。
- 【お悩み④】妻に財産を残したいけど、妻が亡くなった場合は、私の子供ではなく、姪っ子に財産を残したいと考えています。どのような遺言書を残せばいいのでしょうか。
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予備的遺言がおすすめです。
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代襲遺贈は発生するのか
母が残した遺言書によれば、生前お世話になった第三者の方に遺贈する旨の遺言があります。でもその人は既に他界しています。この場合、遺言は無効でしょうか



生前にお世話になった方の恩に報いるために、相続人ではない方に一定の財産を残したいと考える人は結構いらっしゃいます。
この場合に、よく問題となるのが、その第三者が相続発生以前に亡くなっているというケースです。



私は、息子です。
その第三者の方が亡くなっているため、その第三者の相続人の方が受け取る権利があるのかどうかが気になっています。



いわゆる代襲遺贈は生じるのか、という問題です。
この点、民法は代襲遺贈を否定しています。
第九百九十四条 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。



したがって、第三者の相続人が代襲相続をすることはありません。



ありがとうございます。
すっきりしました。



もっとも、遺言の解釈は、一般の方が想像しているよりもはるかに難易度の高い業務です。
例えば、当該遺言の解釈上、その第三者が亡くなっている場合には、その相続人に遺贈する旨の解釈があり得るのであれば、その方が受け取り権利が認められる可能性があります。
一義的に解釈が出来ない遺言の場合は、早期に弁護士に相談するのがおすすめです。
相続させる旨の遺言で指定された者が既に亡くなっていた場合
父が残した遺言書によれば、母に全財産を相続させると書かれているけど、母は父より先に亡くなっています。相続は、どうなる?



今度は、第三者ではなく、相続人に相続させる旨の遺言がのこされていたけど当該相続人が既になくなっているケースです。



この場合も代襲相続は生じないという理解でよいのでしょうか。



この点の取り扱いに関して、民法は明確な規定を設けていません。
もっとも、最高裁がこの場合の考え方を示しています。
「相続させる旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言書の置かれていた状況などから、遺言者が上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である」(最高裁平成23年2月22日)



したがって、原則として、当該条項は無効となります。
ただし、例外に留意する必要があります。



この「特段の事情」はどのように考えればいいのでしょうか。



この「特段の事情」の解釈は、非常に難しい。
弁護士に、遺言の背景事情や関連事情を話して、対面で相談するのが良いと思います。
相続財産を残したい人がいるけど自分よりも先に亡くなるかもしれない
妻に財産を残したいけど、妻が亡くなった場合は、二人いる子供のうち長女に財産を残したいと考えています。どのような遺言書を残せばいいのでしょうか。



配偶者に相続財産を残したいという人は多いと思います。しかし、配偶者が亡くなっていた場合に、どうしたいのかが明確になっていない遺言が実務上、よく見られます。



私には、長男と長女がいますが、長男とは長年疎遠になっています。
私が亡くなった時に妻が生きていれば妻に財産を残したいですが、亡くなっている場合には、長女に財産を残したいと考えています。



このケースで「全財産を妻に相続させる」旨の遺言だけを残していると、その条項は無効となります。そうなれば、法定相続によって、子供が相続をすることになり、遺言者の意思が実現されません。
この場合には、いわゆる予備的遺言を残しておくべきです。
以下は、一般的な予備的遺言の条項例です。
<予備的遺言の条項例>
私は、妻●が私に先立って、又は私と同時に死亡したときは、妻●に相続させるとした財産を、長女●(平成●年●月●日生)に相続させる



このような予備的遺言を残しておけば、奥さんが亡くなった場合には、長女さんが財産を遺言相続することになります。



ありがとうございます。
すっきりしました。



もっとも、長男さんは、子として遺留分を有することから、相続発生時に相続人間で遺留分を巡る争いになる可能性もあります。
遺言に伴う争いを予防をしたいのであれば、弁護士に事前に相談されるとよいでしょう!
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