【大阪市の経営者ご家族へ】非上場株式(自社株)の遺産分割はなぜ揉める?原因と対応策を弁護士が解説

弁護士 山村 真吾
Leapal法律事務所 代表
法律事務所名のLeapal(リーパル)は、「Legal」(法律)、「Leap」(飛躍)、「pal」(仲間、共に)の造語であり、「法律を通じて、困難を依頼者と共に乗り越えたい」という想いを込めています。弊所は、「中小企業の紛争対応」「遺言相続」「個人賠償法務」の3分野に注力しています。

大阪市内には、ものづくりや卸売・小売、サービス業を中心に、創業者一族が経営を担う中小企業が数多くあります。こうした会社のオーナー経営者が亡くなったとき、相続財産の中でも特にトラブルの火種になりやすいのが「非上場株式(自社株)」です。

現金や不動産と違い、非上場株式は分けにくく、値段も一目では分からず、しかも会社の経営権そのものと直結しています。

本記事では、大阪市内の中小企業経営者のご遺族・相続人の方に向けて、非上場株式の遺産分割がなぜ揉めやすいのか、その理由と生前・相続発生後にできる対応策を弁護士の視点から解説します。

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目次

非上場株式の遺産分割が揉めやすい6つの理由

1. 株式の評価額をめぐる意見の対立

非上場株式には市場価格がなく、時価純資産方式、類似業種比準方式、配当還元方式など複数の評価方法があります。どの方式を採用するかによって評価額が大きく変わるため、「経営を継ぐ相続人はできるだけ低く評価したい」「経営に関与しない相続人はできるだけ高く評価してほしい」という利害の対立が生じ、協議が難航しがちです。

2. 株式は現金のように公平に分けられない

株式は口数のうえでは分割できても、経営権という観点では細分化すればするほど会社運営に支障が出ます。

後継者に集中させれば他の相続人の取り分が減り、逆に法定相続分どおりに分散させれば、経営権が分散して意思決定が滞ります。平たく言うと、この「分けると価値が壊れる」性質が対立の根本原因です。

3. 遺産分割が終わるまで株式が「準共有」状態になる

遺産分割協議が成立するまで、株式は相続人全員の準共有(共有に準じた状態)となります。

会社法106条により、共有者は権利を行使する者を一人定めて会社に通知しなければならず、この権利行使者を誰にするかでも相続人間の主導権争いが起きます。

判例上、権利行使者の指定は持分価格の過半数で決めるとされていますが、相続人間の関係がこじれていると、この指定自体で対立が長期化するケースも少なくありません。

4. 譲渡制限株式で換金しにくい

中小企業の株式の多くは定款で譲渡制限が付されています。

経営に関与しない相続人が株式を承継しても、自由に売却して現金化することができず、「欲しくない財産を押し付けられた」という不満につながりやすい点も特徴です。

5. 遺留分侵害額請求による多額の金銭負担

2019年の相続法改正により、遺留分は株式そのものではなく金銭で請求する権利(遺留分侵害額請求権)に一本化されました。

後継者に株式を集中させる遺言を残しても、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けると、後継者は多額の代償金を金銭で用意しなければならず、支払原資がなければ結局は株式を手放さざるを得ない事態も起こり得ます。

6. 相続税の納税資金と会社側の管理不備

自社株の評価額は業績が良いほど高くなる傾向がありますが、換金性はありません。

相続税の申告・納税期限は相続開始から10か月と限られており、納税資金の確保が別の争点になります。

また大阪市内の老舗企業では、株主名簿が長年更新されていない、名義株(名義だけ他人になっている株式)が整理されていないといった管理不備が見つかることもあり、誰が真の株主かという事実関係の争いにまで発展するケースもあります。

7. 経営に貢献してきた相続人とそうでない相続人の温度差

長年会社の経営や事業拡大に貢献してきた相続人が「寄与分」を主張する一方、経営に関わってこなかった相続人は法定相続分どおりの取り分を求めることがあります。

会社の内部事情や業績への貢献度は外部から評価しづらく、双方の言い分がかみ合わないまま感情的な対立に発展しやすい点も、非上場株式が絡む遺産分割特有の難しさです。

中小企業庁の調査でも、経営者の高齢化と後継者未定の企業の多さが繰り返し指摘されており、事業承継対策を取らないまま相続が発生し、遺産分割協議が長期化する例は大阪市内でも珍しくありません。

協議が整わず家庭裁判所の調停・審判に持ち込まれれば、解決までに1年以上を要することもあります。

揉めないための対応策

生前の遺言書の作成

最も基本的かつ有効な対策は、経営者本人が生前に遺言書を作成し、後継者に株式を集中的に承継させる意思を明確にしておくことです。付言事項で他の相続人への配慮や思いを記しておくことで、感情的な対立を和らげる効果も期待できます。

遺留分対策(生前贈与・民法の特例の活用)

生前に後継者へ株式を贈与しておく方法に加え、経営承継円滑化法に基づく「遺留分に関する民法の特例」(除外合意・固定合意)を活用する方法があります。遺留分権利者全員の合意と経済産業大臣の確認・家庭裁判所の許可を得ることで、自社株を遺留分算定の対象から除外したり、評価額を合意時点の額に固定したりすることができ、将来の遺留分トラブルを未然に防げます。

種類株式・定款対応の活用

議決権のない株式や、重要事項に拒否権を持つ株式(黄金株)など種類株式を活用すれば、経営権を後継者に集中させつつ、他の相続人にも財産的価値を承継させることが可能です。

また、会社法174条に基づき「相続人等に対する売渡し請求」を定款に定めておけば、相続によって望まない第三者や少数株主に株式が分散するのを防ぐ手立てにもなります。

事業承継税制(特例措置)の活用

一定の要件を満たせば、非上場株式にかかる贈与税・相続税の納税が猶予・免除される事業承継税制(特例措置)を利用できます。適用には「特例承継計画」の提出が必要で、2026年8月現在、提出期限は令和9年9月30日(2027年9月30日)まで延長されていますが、制度の詳細や期限は税制改正により変更されることがあるため、顧問税理士と早めに確認することをお勧めします。

代償分割と資金準備

後継者が株式を単独で承継する代わりに、他の相続人へ代償金を支払う「代償分割」も有効です。

生命保険を活用して代償金の原資をあらかじめ準備しておくと、相続発生後の資金繰りに悩まずに済みます。

家族信託の活用

株式を信託財産として後継者に管理・議決権行使を任せつつ、経済的な利益(配当など)は他の相続人にも分配する「家族信託」の仕組みも選択肢の一つです。経営権と財産的利益を切り離せるため、後継者への権限集中と他の相続人への配慮を両立しやすくなります。

株主名簿・議事録など会社側の体制整備

名義株の整理や株主名簿・株主総会議事録の整備は、地味に見えて非常に重要な対策です。

誰が真の株主かが不明確なままだと、相続発生時に「そもそも誰の遺産か」という入口の争いが生じます。生前のうちに会社の株主構成を法的に明確にしておくことで、相続発生後の混乱を大きく減らせます。

早期の専門家への相談

株式評価、遺留分、事業承継税制はいずれも専門性が高く、相続発生後に対応しようとすると選択肢が限られてしまいます。経営者の生前から弁護士・税理士に相談し、遺言書の作成や株主名簿の整理、種類株式の設計などを計画的に進めておくことが、相続人同士の争いを防ぐ最大の対策です。

よくある質問

遺言がないまま経営者が亡くなった場合、会社の議決権は誰が行使できますか。

遺産分割が成立するまで株式は相続人全員の準共有となり、会社法106条に基づき権利行使者を一人定めて会社に通知する必要があります。指定は相続人間の話し合いによりますが、まとまらない場合は持分価格の過半数で決するとされており、対立が続くと議決権行使自体が滞るおそれがあります。

後継者以外の相続人にも株式を残さなければなりませんか。

必ずしもそうではありません。種類株式(無議決権株式など)や代償分割、遺留分に関する民法の特例を組み合わせることで、経営権は後継者に集中させつつ、他の相続人には金銭など別の形で公平に配慮することが可能です。

まとめ

非上場株式の遺産分割は、評価額の算定、経営権の帰属、遺留分、納税資金など複数の問題が絡み合うため、一般的な相続に比べてトラブルが長期化・深刻化しやすい分野です。

大阪市内で会社を経営されている方、またそのご家族・相続人の方は、相続が発生してから慌てるのではなく、早い段階で専門家に相談し、遺言書の整備や事業承継税制の活用など、できる対策から着手することをお勧めします。

非上場株式の遺産分割でお困りの方、または将来に備えて対策を検討されたい大阪市内の経営者・ご家族の方は、Leapal法律事務所までお気軽にご相談ください。事業承継や相続に精通した弁護士が、貴社の状況に応じた最適な解決策をご提案いたします。

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