相続が発生した際、「特定の相続人にすべての財産を相続させる」といった内容の遺言書が見つかり、他の相続人の取り分が著しく少なくなっているケースがあります。
このような場合に問題となるのが「遺留分」です。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に法律上保障された最低限の取り分であり、これを侵害された相続人は、遺言によって多くの財産を得た相続人に対して金銭の支払いを求めることができます(遺留分侵害額請求)。
大阪で遺留分を巡るトラブルに携わっていると、他の地域とは異なる特有の傾向が見えてきます。
本記事では、大阪における遺留分トラブルの特徴として「中小企業経営者が多いこと」「不動産の評価額が高いこと」の2点を中心に解説し、なぜ遺留分の請求は遺産分割以上に慎重な対応が求められるのかをご説明します。
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特徴1:中小企業経営者が多く、自社株式が遺留分の争点になりやすい
大阪は古くから商都として発展してきた歴史があり、今なお製造業・卸売業・小売業・サービス業などを営む中小企業のオーナー経営者が数多く存在します。こうした経営者が亡くなった際、後継者である特定の相続人に自社株式や事業用不動産を集中して承継させる内容の遺言が作成されることが少なくありません。
事業の継続性を守るためには合理的な判断ですが、その結果として後継者以外の相続人の遺留分が大きく侵害されるケースが頻発します。
自社株式は非上場であることが多く、市場価格が存在しないため、遺留分算定の基礎となる評価額そのものが争点になります。時価純資産方式や類似業種比準方式など複数の評価方法があり、どの方式を採用するかによって金額が大きく変わるため、当事者間の協議だけでは折り合いがつかず、法的な専門知識を踏まえた交渉や場合によっては裁判所での手続きが必要になることも珍しくありません。
また、後継者側に十分な金銭的手当てがない場合、遺留分侵害額請求に応じるための資金調達が事業運営そのものを圧迫する事態にもつながりかねません。
特徴2:不動産の評価額が高く、評価方法を巡る対立が生じやすい
大阪は都市部を中心に地価水準が高く、相続財産に占める不動産の割合が大きくなる傾向があります。自宅不動産に加え、賃貸マンションや店舗、駐車場などの収益物件を複数所有している方も多く、遺産全体に占める不動産の評価額の比重が高くなりやすい地域です。
不動産の評価にあたっては、相続税評価額(路線価等)、固定資産税評価額、不動産鑑定士による鑑定評価額、実勢価格(時価)など複数の評価軸が存在し、遺留分侵害額請求においてはこのうち「時価」が基準とされます。
しかし当事者双方が独自に根拠を主張し合うと評価額に大きな開きが生じ、これが解決を長期化させる大きな要因となります。特に収益物件については賃料収入や空室率、将来的な修繕リスクなども評価に影響するため、専門家による適正な評価がなければ、感覚的な主張のぶつかり合いに終始してしまうおそれがあります。
遺留分の請求は遺産分割よりも法的な注意点が多い
遺留分侵害額請求は、通常の遺産分割協議に比べて、より高度な法的知識と迅速な対応が求められる手続きです。
第一に、時効・除斥期間の問題があります。
遺留分侵害額請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年、また相続開始から10年を経過すると行使できなくなります。「まだ大丈夫」と放置している間に権利そのものが消滅してしまう危険があるため、他の相続分割協議以上にスピード感のある対応が不可欠です。
第二に、遺留分算定の計算方法が複雑です。
相続開始時の遺産だけでなく、一定期間内の生前贈与や特別受益にあたる贈与も算入の対象となり、その調査・立証には専門的な知識が必要であり、計算方法が複雑です。
第三に、2019年の相続法改正により遺留分侵害額請求は金銭債権化されており、不動産や自社株式そのものの返還ではなく、金銭での解決が原則となりました。
このため、支払う側の資金繰りや分割払いの交渉、遅延損害金の扱いなど、遺産分割にはない独自の論点が生じます。
このように、遺留分を巡る問題は評価・時効・請求範囲のいずれをとっても専門性が高く、当事者だけで適切に対応することは容易ではありません。
遺留分侵害の可能性のある遺言書を見つけたら速やかにご相談を
遺言書の内容を確認し、自身の取り分が不当に少ないと感じた場合、あるいは特定の相続人にのみ自社株式や高額な不動産が集中して承継されていることが分かった場合は、遺留分侵害の可能性を疑い、できるだけ早く弁護士にご相談いただくことを強くお勧めします。
遺留分侵害額請求には前述のとおり厳格な期間制限があるうえ、財産評価や算定基礎の調査には時間がかかります。相談が遅れるほど、証拠収集や交渉の選択肢が狭まり、結果として不利な条件での解決を余儀なくされるリスクが高まります。
逆に早期に相談いただければ、内容証明郵便による請求権の保全、財産調査、適正な評価額の算定、相手方との交渉まで、見通しを持って進めることができます。
よくある質問
- 遺留分侵害額請求は、まず相手方と直接話し合えばよいのでしょうか。
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当事者同士での話し合いも可能ですが、遺留分の算定基礎となる財産の範囲や評価額について認識の食い違いがある場合、感情的な対立に発展しやすく、時効期間が進行してしまうリスクもあります。早い段階で弁護士が介入し、内容証明郵便による請求権の行使を明確にしたうえで、資料に基づいた交渉を進めることが望ましいといえます。
- 当事者同士での話し合いも可能ですが、遺留分の算定基礎となる財産の範囲や評価額について認識の食い違いがある場合、感情的な対立に発展しやすく、時効期間が進行してしまうリスクもあります。早い段階で弁護士が介入し、内容証明郵便による請求権の行使を明確にしたうえで、資料に基づいた交渉を進めることが望ましいといえます。
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遺留分侵害額請求は金銭での解決が原則ですが、請求を受けた側の資力が乏しい場合、裁判所に対して支払期限の猶予を求めることができる制度もあります。分割払いや支払時期についても交渉の余地があるため、請求する側・される側のいずれの立場でも、早期に弁護士へ相談し、無理のない解決方法を検討することが重要です。
- 遺言書に「遺留分を放棄させる」といった記載がある場合、従わなければなりませんか。
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遺留分は法律上保障された権利であり、遺言書の記載のみで一方的に放棄させることはできません。相続開始前の遺留分放棄には家庭裁判所の許可が必要とされており、単に遺言に記載があるだけでは効力が生じません。このような文言を見つけた場合も、自己判断せずに弁護士に確認することをお勧めします。
まとめ
大阪では中小企業経営者による事業承継を意識した遺言や、評価額の高い不動産が絡む相続が多く、遺留分を巡るトラブルは他の地域以上に複雑化しやすい傾向にあります。
自社株式や収益不動産の評価をめぐる対立は当事者間の話し合いだけでは解消しづらく、専門的な調査や交渉力が解決の鍵を握ります。
遺留分の請求は遺産分割協議以上に法的な注意点が多く、権利行使には期間制限もあることから、遺言書の内容に疑問や不安を感じた時点で、できる限り早く専門家に相談することが円満かつ有利な解決への近道です。
遺留分侵害の可能性がある遺言書を発見された方、大阪で相続・遺留分のトラブルにお悩みの方は、Leapal法律事務所までお気軽にご相談ください。
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