はじめに
自宅や賃貸マンションと並んで、月極駐車場やコインパーキングとして活用されている土地も、相続の場面で頻繁に登場する財産です。「更地に近く、建物もないので分けやすいはず」と考えられがちですが、実務上は駐車場特有の事情から遺産分割協議が難航するケースが少なくありません。
本稿では、駐車場の相続でとくに争いになりやすい4つのポイント――分割のしにくさ、評価額をめぐる対立、収益(賃料収入)の分配と管理、売却か保有継続かの対立――について解説します。
1. 分割のしにくさ ― 「更地だから分けやすい」は誤解
駐車場用地は建物がない分、物理的には分筆(土地を複数に分けること)が容易に思えるかもしれません。しかし、駐車場としての収益性は区画数や出入口の位置、接道状況に大きく左右されるため、単純に面積按分で分筆すると、駐車場としての機能や収益力が損なわれてしまうことがあります。
たとえば、10台分の駐車区画がある土地を相続人2人で分筆すると、それぞれ5台分の土地になりますが、出入口や通路の取り方次第では車の出し入れがしづらくなり、賃料水準を維持できなくなることもあります。結果として、「等しく分けたつもりが、実際の資産価値は不公平になった」という不満が生じやすいのです。
2. 評価額をめぐる対立
駐車場用地は、更地または自用地として評価されるのが原則です。アパートなどの賃貸建物が建っている土地(貸家建付地)であれば、借家人の権利分だけ評価額が下がりますが、青空駐車場にはこうした評価減の仕組みが基本的に適用されません。
このため、「賃料収入を生んでいる収益物件」であるにもかかわらず、相続税評価額は自宅の敷地などと同水準の高い評価になりがちです。とくに都市部の駐車場では評価額が想定以上に高くなり、相続税の負担感や、他の相続人との取得割合の調整をめぐって対立が生じやすくなります。舗装やアスファル卜、フェンス、精算機などの構築物についても別途評価が必要になり、評価そのものに時間を要することも協議の長期化につながります。
3. 収益(賃料収入)の分配と管理をめぐる対立
駐車場は、遺産分割協議が続いている間も、月極利用者からの賃料やコインパーキングの収益が発生し続けます。この収益の扱いをめぐっては、次のような対立が生じやすくなります。
- 相続開始後に発生した賃料は誰が受け取るべきか(相続人間での分配割合)
- 管理会社との契約や、利用者との賃貸借契約を誰が承継し、対応するのか
- 空き区画が生じた際の広告や新規契約の判断を誰が行うのか
とくに、相続人の一人が便宜上、被相続人の口座や管理を引き継いで賃料を受け取り続けているようなケースでは、「収益を独り占めしているのではないか」という疑念から、他の相続人との関係がこじれることもあります。遺産分割協議が長引くほど、未分配の賃料が積み上がり、清算方法をめぐる対立も大きくなりがちです。
4. 売却か保有継続かをめぐる対立
駐車場は、まとまった現金化がしやすい一方で、安定した賃料収入を生む資産でもあるため、「売却して現金で分けたい相続人」と「収益物件として保有を続けたい相続人」との間で方針が対立しやすい財産です。
保有を続ける場合、共有名義のまま管理を続けるのか、特定の相続人が代償金を支払って単独取得するのかという選択を迫られます。共有名義のまま放置すると、将来的な売却や用途変更(アパート等への建て替えを含む)の際に相続人全員の同意が必要になり、意思決定がさらに困難になるリスクもあります。次の代への相続(二次相続)まで見据えると、共有状態を漫然と続けることは避けるべき選択肢といえるでしょう。
まとめ ― 収益性と分割のしやすさは別問題と心得る
駐車場は「更地に近いから分けやすい」というイメージとは裏腹に、収益性の維持、評価額の高さ、賃料収入の管理、将来の共有リスクといった要素が複雑に絡み合う財産です。とくに、相続開始後も収益が発生し続けるという性質上、協議が長引くこと自体が新たな対立の火種になりやすい点には注意が必要です。
円滑な解決のためには、早い段階で駐車場の収益状況と評価額を正確に把握し、売却・保有継続・代償分割のいずれの方針を取るかについて、相続人間で早期に合意形成を図ることが重要です。感情的な対立に発展する前に、弁護士等の専門家を交えて協議を進めることをお勧めします。
※本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な事案については、弁護士等の専門家にご相談ください。







