【弁護士解説】大阪でマンション管理費の回収なら

マンションの管理費や修繕積立金(以下、管理費等)の滞納は、管理組合にとって大きな問題です。
滞納が続けば、マンションの適正な管理が難しくなり、他の区分所有者にも負担がかかります。
本記事では、管理費等の滞納を回収する具体的な方法について詳しく解説します。

▼記事の執筆者▼

弁護士山村真吾の紹介

管理費等滞納の背景

 

まず、滞納管理費が発生してしまう背景について近年の状況を踏まえてご紹介させて頂きます。

管理費等の滞納が増加する背景には、経済の長期低迷世帯収入の伸び悩み、さらにはコロナ禍の影響があります。

特に最近は、築年数の古いマンションで滞納の割合が高く、高齢者世帯が支払い困難に陥るケースが増えています。また、親族間の関係が希薄になることで、高齢者の滞納に気付かない場合も多くあります。

長期的な視点で見ると、経済の低迷や収入の伸び悩みが大きな原因ともいえるでしょう。多くの家庭がマンションを購入する際には、将来的な収入の維持、増加を見込んでいますが、実際には思うように収入が増えず、管理費等の支払いに困難を感じるケースが増えています。特に近年のコロナ禍の影響で、経済的な不安定さが増し、滞納が増える傾向にあります。また、婚姻時に購入したが、その後離婚し、家族関係が変化したことにより支払いが困難となっているケースもあります。

さらに、平均寿命の長期化に伴い、老後資産が不足することや、その不足を懸念することも管理費等の滞納の一因です。高齢化が進む中で、年金や貯蓄だけでは生活費を賄うのが難しくなることがあります。特に築年数の古いマンションで滞納が多いというデータは、この現象を裏付けているといえるでしょう。

滞納が発生しているマンションの割合国交省は、5年に1回、マンション総合調査として、管理費の滞納が発生しているマンションの割合を公表しています。
平成20年総合調査:32.5%
平成25年総合調査:36.8%
平成30年総合調査:24.6%
※令和5年総合調査の結果公表は、令和6年6月予定です。
減少傾向にあるといえますが、それでも約4分の1のマンションで管理費等の滞納が発生しています。

管理費等滞納の問題点

管理費の滞納の問題は、管理組合の財務状況の悪化にとどまりません。

修繕計画への影響

滞納が続くと、修繕計画に狂いが生じ、共用部分の維持管理が困難になります。管理費や修繕積立金が不足すると、大規模修繕が遅れ、マンションの価値が下がるリスクがあります。共用部分はマンションの購入者全員で管理する必要があり、そのために必要な費用が管理費や修繕積立金という形で徴収されています。しかし、滞納が発生すると、これらの計画が順調に進まなくなり、マンション全体の価値や住環境が悪化する恐れがあります

人間関係の悪化→滞納の連鎖

滞納者がいることで区分所有者間に不公平感が生じ、マンション内の人間関係が悪化する懸念があります。

マンションは区分所有者全員が費用を出し合って維持修繕していくものであり、一部の人が滞納すると、他の区分所有者が迷惑を被ることになります。また、管理組合が滞納者に対して管理費等を支払ってもらうよう働きかけても、滞納状態が続くと管理組合への不信感が生じ、滞納の連鎖につながる危険性があります

そのため、管理組合としては、上記のような負の連鎖が生じないように、滞納に対して早期に対応することが望まれます。

管理費等の具体的な回収方法

管理費回収の基本的な流れは以下の通りです。

ステップ①交渉

ステップ②訴訟(支払督促、少額訴訟、通常訴訟)

ステップ③強制執行

ステップ①で解決ができた場合には、さほど弁護士費用はかかりませんが、ステップ②、ステップ③に進めば相応の弁護士費用がかかります。弁護士費用の予算を取ることができるのかどうかも確認しておきましょう。

催促・交渉

まずは滞納者に対して電話や文書で支払いを促します。管理会社名義であったり、理事長名義で督促することが一般的です。
場合によっては弁護士名義の内容証明郵便を送付し、支払いを督促します。また、滞納者が債務を承認すると時効の進行がリセットされるため、滞納者の債務承認書を提出してもらうなど、債務を承認してもらうことも重要です。

ステップ①段階:弊所の弁護士費用の目安・着手金5万~
・報酬金回収額の16%

訴訟(支払督促、少額訴訟、通常訴訟)

支払督促や訴訟を通じて債務名義を取得し、強制執行を行うことができます。支払督促は簡易迅速な手続きで、相手が異議を申し立てない場合はそのまま強制執行が可能です。訴訟では、支払督促に対する異議申し立てがあった場合や、滞納額が大きい場合に選択されるのが一般的です。判決が出た後、滞納者が支払わない場合は強制執行を行います。
また、裁判手続の中で、和解解決が可能な場合は、和解によって解決することも珍しくありません。

ステップ②段階:弊所の弁護士費用目安・着手金:10万円~
・報酬金:回収額の16%

強制執行

滞納者の給与や預金口座、車などの動産、不動産に対して強制執行を行い、管理費等を回収します。

不動産競売を行うのが一般的ですが、不動産の場合は、無剰余取消のリスクがあります。そのため、区分所有法59条に基づく強制競売も検討する必要があります。また、相手方の対応次第ですが、任意売却を通じて管理費等を回収する方法もあります。

ステップ③段階:弊所の弁護士費用目安・着手金:10万円~
・報酬金:回収額の16%

交渉段階における留意点

まず、管理組合において、何か月の滞納が発生したらどのような対応をするのかをあらかじめ決めておくと良いかと思います。

例えば、滞納2か月以上が認められる場合には、理事長名義で督促状を送付する。滞納4か月以上が認められる場合には、弁護士に対応を相談する等です。

通常は、管理組合が委託しているマンション管理会社が滞納者に対する対応をすることが多いかと思います。対応が後手にならないように、マンション管理会社とよく協議をされると良いかと思います。
また、弁護士に交渉の依頼をする場合には、着手金5万円以上かかるのが一般的かと思いますので、予算はあるのかも確認が必要でしょう。

後述のとおり、滞納管理費回収のために管理組合が支出した弁護士費用は、管理規約の規定の仕方によっては、滞納者に請求が可能です。
弁護士に依頼する際には、依頼する前の段階で、弁護士費用を滞納者に請求ができるかどうかを確認されると良いかと思います。

支払督促・訴訟段階における留意点

交渉による解決が難しい場合には、支払督促又は少額訴訟通常訴訟を検討することになります。

支払督促がよいのか、少額訴訟がよいのか、通常訴訟がよいのかは弁護士に相談されると良いかと思います

以下、簡単にそれぞれのメリット、デメリットを解説させて頂きます。

支払督促

支払督促は、裁判所書記官が書面審査のみで相手方に発付し、相手方が異議申立をしなければ確定し、強制執行が可能となります。
書面審査のみのため裁判所への出廷の必要がない点や、費用も安く済むというメリットがありますが、相手方が異議を出せば通常訴訟に移行します
この際、異議に特別な理由は必要ありません。

少額訴訟

少額訴訟は、請求額が60万円以下の金銭債務の履行を目的する場合に利用できます。原則として、初回の裁判(期日)で審理は終結し、即日で判決の言渡しがなされます。

ただし、相手方が通常訴訟への移行を申述した場合や、判決書送達後2週間以内に当事者が異議を申し立てた場合には、通常訴訟に移行します

通常訴訟

少額訴訟と異なり、第一回で結審(審理を終結する)するという制限はありません。裁判所が双方主張、立証を踏まえた判決がなされます。
また、少額訴訟と異なり、相手方の所在地等が不明な場合でもあっても、公示送達の方法で判決を取れる可能性もあります。

他方で、額訴訟や支払督促と比較して、費用が高額になります

弊所では、支払督促であろうが、少額訴訟であろうが、通常訴訟であろうが弁護士費用は変わりません。
また、通常訴訟であれば、裁判手続の中で、和解的解決を図ることができます(少額訴訟でも可能ですが、審理回数に制限があるため、通常訴訟のほうが和解がしやすいと考えています。)。
そのため、ご相談を受けた際は、基本的には通常訴訟をお勧めしております

この段階では、強制執行を見据えた対応を検討するべきです。具体的には、強制執行をした場合に回収可能性があるのかを調査します。
当該マンションの市場価格や抵当権がついているかどうかを確認しておきましょう。

強制執行段階における留意点

強制執行段階で気を付けなければならいのは無剰余取消のリスクです。

リスクの評価のためには、当該物件に抵当権がついているか、付いている場合に残債務はいくらかを確認する必要があります。
残債務の確認は、弁護士であれば、弁護士法に基づく照会制度で調査をすることが可能な場合もありますので、弁護士に相談されると良いかと思います。

無剰余取消が見込まれる場合には、区分所有法59条に基づく競売も見据えた対応協議が必要です。

区分所有法59条に基づく競売については別記事で解説出来ればと思います。

滞納管理費等の消滅時効の完成を防ぐ方法

管理費等には5年の消滅時効があります。時効の完成を防ぐためには、以下の方法があります。

  1. 督促
  2. 債務承認
  3. 裁判上の請求

以下、簡単にご説明させていただきます。

催告

内容証明郵便で催告を行い、6ヶ月間の時効完成猶予を得ます。催告は証拠かのため、内容証明郵便で行ってください

後述のとおり、催告による時効完成の猶予が必要となる状況になっているようなケースでは、弁護士に対応を相談されると良いと思います。

◆第百五十条 (催告による時効の完成猶予)
催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

債務の承認

滞納者に債務を承認させ、時効の進行をリセットします。滞納者が管理費等を滞納していることを認めると、その時点から新たに5年の時効がスタートします。

◆民法第百五十二条 (承認による時効の更新)
時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。

裁判上の請求

訴訟や支払督促を通じて裁判所に請求し、権利を確定させます。確定判決後は、時効期間が10年に延長されます。

以上のとおり時効完成を防ぐ方法をご紹介しましたが、管理費の消滅時効が問題となるようなケースでは、弁護士が関与するべき事案のことが多いかと思います。

まずは、弁護士に相談されると良いかと思います。

◆民法 第百四十七条 (裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)

次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

 裁判上の請求
 支払督促
 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加

滞納管理費の予防策

管理費等の対応を予防する対策をご紹介させて頂きます。

口座振替の導入

管理費等の徴収方法を口座振替にすることで、振込忘れを防ぎます。

すでに多くのマンションで導入されていますが、まだのマンションは積極的に導入を検討すると良いでしょう。

管理費等がなぜ必要なのか説明する

各区分所有者に管理費等の用途をわかりやすく説明し、その重要性を理解してもらいます。
管理費等の存在はマンションの購入時に説明されますが、その具体的な用途や滞納による影響を改めて説明することで、支払いの意識を高めることができます。

管理規約を工夫する

管理規約に遅延損害金や弁護士費用負担について規定し、ペナルティを周知することで滞納を抑制します。
多くの管理規約では、管理費の滞納時に遅延損害金が発生すること、督促のために支出した弁護士費用については滞納者に請求ができるように規定されています。
このような規定化がされていない管理組合では、まずは管理規約の改定を検討されても良いでしょう

滞納が発生したら早期に対処する

滞納が発生した場合は、早期に対応することで滞納の連鎖や長期化を防ぎます。管理組合が迅速に対応し、滞納が長期化する前に解決することが重要です。
管理費は滞納機関が長期化すればするほど回収が難しくなります。
管理組合の理事の方におかれましては、きちんと滞納の事実を認識できるようにしておくこと、対応方法を管理会社と協議すること、必要に応じて弁護士に相談、依頼することを肝に銘じてください。

Leapal法律事務所で対応できること

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Leapal法律事務所について

弊所では、マンション管理の分野を注力分野の一つとして取り扱っています。

滞納管理費等の回収はもちろん、規約改定のサポートも行っています。

60分間の無料法律相談を実施しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
また、事件を受任する前に丁寧な見積もりを心がけています。相談をした弁護士に事件を依頼しなければならないわけでもありません。ご安心してご相談頂けますと幸いです。

なお、繁忙状況やご相談の内容によっては、無料相談をお受けできないこともございますので予めご了承ください。

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弁護士 山村真吾

弁護士 山村真吾

・ベンチャー精神を基に何事にもフレキシブルに創造性高く挑戦し、個々の依頼者のニーズを深く理解し、最適な解決策を共に模索します。|IT、インターネットビジネス、コンテンツビジネスに精通しており、各種消費者関連法、広告・キャンペーン等のマーケティング販促法務や新規サービスのリーガルチェックを得意とします。|一部上場企業から小規模事業まで幅広い業態から、日常的に契約書レビューや、職場トラブルや定時株主総会の運営サポート等の法的問題に対応した経験から、ビジネスと法律の橋渡し役として、法的アドバイスを行います。|その他マンション管理案件、氏の変更、離婚、遺言相続、交通事故等の一般民事案件にも精力的に取り組んでいます。