「誰が相続人になるのか分からない」 「相続する財産がどこにどれだけあるのか、生前に聞きづらかった」 「すでに当時の状況を詳しく知る人がおらず、調べようがない」
相続が発生した際、このようなお悩みを抱えられる方は決して少なくありません。特に親族間で聞きづらい事情がある場合、何から手をつければいいのか戸惑ってしまうものです。
本記事では、相続手続きの土台となる「相続人調査」と「相続財産調査」、そして近年ご相談の多い「遺産の使い込みへの対応」について、弁護士の視点から分かりやすく解説します。
1. 相続人・相続財産調査に関するよくあるお悩み
相続の手続きを進めるにあたり、多くの方が以下のような不安や課題に直面されています。
- 連絡が取れない相続人がいる
- 正確な相続人の範囲が分からない
- 戸籍の具体的な取得方法が分からない
- 相続財産の全容が把握できない・調査方法が分からない
- 生前、他の相続人により財産の使い込みがあったかどうかを知りたい
これらの問題は、放置すると後の「遺産分割協議」がすべて無効になってしまうなど、大きな法的トラブルに発展する可能性があります。
2. 執筆者(監修者)紹介
Leapal法律事務所 代表弁護士:山村 真吾
当事務所では、案件を大量に処理するのではなく、限られた依頼者一人ひとりに誠実かつ質の高いリーガルサポートを提供することを信条としています。 相続には複雑な法律問題が絡むため、個々の状況に応じた専門的な対応が不可欠です。当事務所では、法的な知識はもちろん、感情的な対立にも配慮しながら、円満な解決を目指す姿勢を大切にしています。 相続問題で悩まれている方、または不安を抱えている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
3. 【解説①】相続人調査の具体的な方法と手順
相続手続きを始めるには、まず「誰が法的権利を持つ相続人なのか」を完全に特定しなければなりません。これが「相続人調査」です。
調査に必要な戸籍謄本
相続人を特定するためには、被相続人(亡くなった方)の家族関係や婚姻歴、子供の有無を網羅的に確認する必要があります。具体的には以下の書類を集めます。
- 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(「現在戸籍」「除籍謄本」「改製原戸籍」を含む)
- すべての法定相続人の現在の戸籍謄本
- その他、事案に応じて追加で必要となる戸籍
戸籍を収集する3つのステップ
- STEP 1:被相続人の除籍謄本(死亡記載)を取得する まずは被相続人の本籍地の役所で、死亡が記載された除籍謄本を取得します。本籍地が不明な場合は、「本籍地記載あり」の住民票を取得することで確認できます。
- STEP 2:過去の戸籍を順に遡って取得する 取得した除籍謄本を基に、一つ前の戸籍を取得し、さらにその前の戸籍を取得します。これを繰り返し、被相続人の出生時までさかのぼります。
- STEP 3:相続人の現在戸籍謄本を取得する すべての法定相続人を特定し、それぞれの現在の戸籍謄本を取得します。
【法改正によるポイント:戸籍の広域交付制度】 令和6年3月1日より「戸籍証明等の広域交付制度」が導入されました。これにより、本籍地以外の市区町村窓口でも、戸籍証明書や除籍証明書を一括して請求できるようになり、利便性が向上しています(※コンピュータ化されていない一部の戸籍等を除きます)。
知らない相続人が発覚することも
古い戸籍は手書きの毛筆体で書かれていることが多く(「明治19年式」「大正4年式」など)、判読が非常に困難なケースが多々あります。 また、調査を進める中で、「過去に認知した子供」や「前妻との間の子供」など、家族が知らなかった相続人が判明することもあります。どれだけ疎遠であっても、その相続人を除外して行った遺産分割協議は無効になるため、正確な調査と「相続関係説明図」の作成が不可欠です。
4. 【解説②】相続財産調査の具体的な方法と期限
「どこに、どのような財産がどれだけあるのか」を正確に把握することも極めて重要です。主要な財産ごとに以下の方法で調査を進めます。
財産別の調査方法
| 財産の種類 | 主な調査方法・手がかり |
|---|---|
| 預貯金 | 故人の預金通帳、キャッシュカード、郵便物(銀行からの案内)を確認。ネットバンキングの可能性も考慮し、取引がありそうな金融機関の支店へ問い合わせ・残高証明書の請求を行います。 |
| 不動産 | 権利証や固定資産税の納税通知書を探します。また、役所で**「名寄帳(なよせちょう)」**を取得すると、その市区町村内で課税されている不動産の一覧を確認できます(※非課税の不動産は載らないため注意が必要です)。 |
| 有価証券 | 証券会社からの取引明細書、年間取引報告書、株主総会の案内等を探します。**証券保管振替機構(ほふり)**へ開示請求を行うことで、被相続人が口座を持っていた証券会社を特定することも可能です。 |
| 借金・債務 | 消費者金融やローン会社からの郵便物、借用書、ローン残高明細などを確認します。 |
財産調査に「期限」はあるのか?
財産調査そのものに法的な期限はありません。しかし、以下の手続きには厳格な期限が存在するため、結果としてできるだけ早く(数ヶ月以内)に調査を終える必要があります。
- 相続放棄・限定承認の期限: 相続開始を知った日から3カ月以内
- 相続税の申告・納税の期限: 被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内
弁護士に調査を依頼するメリット
司法書士や行政書士も財産調査を行うことができますが、以下のような場合は弁護士への依頼を強くお勧めします。
- 将来的に遺産分割協議で揉める可能性(紛争リスク)がある場合(弁護士であれば紛争予防や依頼者の利益最大化を見据えて動くことができます)
- 次に解説する「他の相続人による財産の使い込み」が疑われる場合
5. 【解説③】相続財産の「使い込み」が疑われる場合の対処法
「親の生前、同居していた長男が勝手に口座からお金を抜き取っていたかもしれない」といった、一部の相続人による遺産の使い込みトラブルは非常に多く見られます。
1. まずは「証拠の収集」から
使い込みを追及するには、客観的な証拠が不可欠です。 相続人であれば、単独で金融機関に対して被相続人名義の「取引履歴(出入金履歴)」の開示請求を行うことができます。そこから、本人の入院中や意識がない時期に不自然な大口の引き出しがないかを精査します。
もし金融機関が情報開示に応じない場合や、調査が難航する場合は、弁護士が「弁護士会照会制度」を利用して法律に基づいた照会を行い、効率的に証拠を収集することが可能です。
2. 返還を求める法的手続き
使い込みの証拠が確保できた場合、まずは本人と話し合いを行います。話し合いによる解決が難しい、あるいは相手が応じない場合には、裁判所に対して「不当利得返還請求」または「損害賠償請求」の訴訟を起こすことになります。
3. 注意すべき「時効」の壁
返還請求権には以下の通り時効(消滅時効)があるため、発覚した場合は迅速に動く必要があります。
- 不当利得返還請求: 権利を行使できると知った時から5年間、または権利を行使できる時から10年間
- 損害賠償請求(不法行為): 損害及び加害者を知った時から3年間、または不法行為の時から20年間
弁護士が介入することで、相手に対して「法的手段を辞さない」という強いメッセージを伝えることができ、裁判に至る前の交渉段階でスムーズな返還に応じさせやすくなるメリットもあります。
6. まとめ:弁護士への相談・依頼を検討すべきケース
相続手続きをスムーズに進め、後悔のない解決を迎えるためには、初期段階での正確な調査がすべてを握っています。特に以下のような状況に当てはまる方は、お一人で悩まずにぜひ弁護士への相談をご検討ください。
- 他の相続人と連絡が取れない、または面識がない
- 親族関係が複雑で、正確な相続人の範囲が分からない
- 平日に役所や金融機関を回る時間がなく、財産の全容が把握できない
- 他の相続人によって、生前に財産が使い込まれた疑いがある
当事務所では、専門的な法知識をもって皆様の円滑な相続手続きをフルサポートいたします。少しでも不安を感じられたら、どうぞお気軽にご相談ください。







