こんにちは。Leapal法律事務所の代表弁護士山村真吾です。
当事務所は事務所設立以来、遺言相続分野に力を入れて取り組んでおり、今回は大阪市内でも特にご相談が多い「借地権付建物」の遺産分割についてお話しします。
大阪市は古くからの住宅街が多く、天王寺区・阿倍野区・東住吉区などを中心に、今なお「土地は地主から借りていて、建物だけが自分たちの名義」という借地権付建物が数多く残っています。
相続が発生し、いざこの借地権付建物を分けようとすると、所有権だけの不動産とは違った特有のトラブルが起こりやすいのです。今回は、その代表的な理由を5つに整理してご説明します。
理由1:借地権の財産的価値が分かりにくい
借地権とは、他人の土地の上に建物を所有するために、地主から土地を借りる権利(賃借権または地上権)のことです。
所有権と違い、登記されていないケースも多く、「うちの借地権はいくらの価値があるのか」を相続人自身で判断するのは容易ではありません。
相続税の申告実務では、借地権の評価は国税庁の路線価に借地権割合(大阪市内であれば60〜70%程度の地域が多い)を乗じて算出しますが、これはあくまで税務上の評価であり、実際に第三者へ売却する場合の時価とは一致しないことも珍しくありません。
評価の物差しが人によって異なるため、「兄は借地権を安く見積もって自分の取り分を増やそうとしている」といった疑心暗鬼が生まれ、遺産分割協議が停滞する原因になります。
理由2:地主の承諾が必要な場面が多く、手続きが複雑
借地権付建物特有の悩ましさは、相続人だけの話し合いでは完結しない点にあります。
相続による借地権の承継そのものは、民法上、被相続人の権利義務を包括的に承継するものですので、原則として地主の承諾は不要です。これは賃借権の譲渡とは異なり、相続はあくまで法定の包括承継だからです。
ところが、遺産分割の結果、特定の相続人が借地権を単独取得した後に建物を建て替えたり、増改築をしたりする場合や、第三者に借地権付建物を売却する場合には、あらためて地主の承諾と、実務上「承諾料」の支払いを求められることがあります
承諾料の相場は地域や契約内容によって幅がありますが、更地価格や借地権価格の一定割合を目安に交渉されるケースが多く、金額をめぐって地主との交渉が長期化することもあります。相続人同士の合意ができても、その先に地主との交渉が控えているという二段階の負担が、借地権付建物の遺産分割を難しくしている大きな要因です。
理由3:遺産分割が長引くと「準共有」状態が固定化する
遺産分割協議がまとまらない間、借地権と建物は相続人全員の準共有になります。この状態が長引くと、次のような問題が発生します。
まず、地代の支払い義務です。地代は本来、相続人全員が法定相続分に応じて負担すべきものですが、実際には同居していた相続人だけが立て替えて支払っているケースが多く、後になって「立替分を清算してほしい」という請求が別のもめごとを生みます。
また、建物の維持管理や修繕についても、共有者全員の合意形成が必要な場面が出てきます。雨漏りの修繕一つとっても、費用負担や工事の可否で意見が割れることがあり、放置すれば建物の老朽化が進み、地主との関係悪化にもつながりかねません。
準共有の状態は、法的には決して安定したものではなく、いずれ誰かが持分の処分や分割請求を求めた時点で、あらためて紛争化するリスクを内包しています。
そのためできる限り共有を回避する協議をするべきです。
理由4:住み続けたい相続人と現金化したい相続人の対立
借地権付建物は、古くからその土地に住んでいる相続人にとっては生活の基盤そのものです。
一方で、遠方に住む他の相続人にとっては、住む予定のない不動産にすぎず、早期に現金化したいと考えるのが自然です。
しかし、借地権付建物は前述のとおり評価が難しく、また地主の承諾が必要な場面もあるため、通常の所有権不動産に比べて売却までの手続きに時間がかかりがちです。「早く売って分けたい相続人」と「住み続けたいので他の財産で調整してほしい相続人(代償分割を希望する相続人)」との間で意見が対立し、代償金の金額算定の基礎となる借地権評価をめぐって、さらに協議が難航するという悪循環に陥りやすいのです。
理由5:借地契約書や地代の支払記録が整理されていない
昭和の時代から続く借地関係では、契約書自体が紛失していたり、口頭での合意のまま何十年も更新されてきたりするケースが少なくありません。
契約期間や地代改定の条件、増改築禁止特約の有無などが不明確なままだと、遺産分割協議の前提となる「そもそもこの借地権はどのような内容の権利なのか」を確定させる作業からスタートしなければならず、想定以上に時間と労力がかかります。
弁護士に相談するメリット
借地権付建物の遺産分割は、
- 借地権の適正な評価
- 地主との交渉
- 相続人間の意向調整
という、性質の異なる3つの課題を同時に進める必要があります。
弁護士が関与することで、借地契約の内容確認や地主との承諾交渉を相続人に代わって行い、評価額についても不動産鑑定士など専門家と連携しながら、相続人全員が納得できる根拠を示すことができます。
感情的な対立が生じやすい場面だからこそ、法的な整理を第三者の専門家に委ねることが、早期解決への近道になります。
まとめ
大阪市内には今なお借地権付建物が数多く存在し、相続の場面で特有のトラブルを抱えやすい不動産です。評価の難しさ、地主との承諾手続き、相続人間の意向の違いなど、複数の要因が絡み合うため、「とりあえず話し合ってみよう」と先送りにすると、かえって状況が複雑化することもあります。
借地権付建物の相続でお困りの方は、早めに専門家へご相談いただくことをおすすめします。
Leapal法律事務所では、弁護士登録以来培ってきた遺言相続分野の知見をもとに、お一人おひとりの状況に寄り添ったご提案をいたします。
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